蒼い光


キミは何度も、確かめるように好きだという
同じ男なんだよな 一応さ オレ・・・

真っ赤になってるだろうなぁって思いながらも、同じように
「オレも好きだよ」って言いたいのに
なんでそんなにオレの言葉を待てないくらいに行動早いのかな
抱きしめられる腕が痛い


「ね。獄寺くんさ、ちょっとまってって。」


あわてて外そうとする腕をさらに肩にまわして
「ダメです。十代目・・・。」だなんて
首筋にかかるため息が、さらにオレの中に熱を吹き込んでく



慌ててもがく身体と裏腹に
冷静になっていく頭の中



なんでオレ、男なのかな
なんで獄寺くん、男なのかな
どうして2人は、男同士なのかな






バスの中で見た、隣のクラスのカップル
まわりを気にしながらも、手をそっとつないでて
ちょっと照れながらも、2人共幸せそうで
見てて、こっちが照れた




『オレ達ってさ、普通の恋人同士ができる当たり前のことが
何一つ堂々とできないんだね』



学校からの帰り道
長い長い坂の途中
空は突きぬけるほど赤く染まって

つい口をついて出た言葉に
キミは立ち止まって怖い顔をした


(あ。変なコトいったな)
しまったと、次の言葉を探そうとしてるオレの手を
キミは乱暴につかんで、ぐんぐん坂を登っていく




「獄寺くん??な・・・なに??」
引きずられるように着いていく
登りきった坂の上からは
オレ達が暮らす街と、沈んでいく夕日が一望できて


キミがはじめてオレを好きだって言ってくれたのも
この坂の上だった
だまってうなづいたオレをキミが抱きしめてくれたのも
この坂の上だった



息をきらせながら、下を向いてしまってるキミを覗き込む



「・・・きゅ・・・急にどうしたの?」




つないだ手を、ぐい と引き寄せられて
オレはキミにすっぽり収まってしまう




「・・・獄寺くん。あの。恥ずかしいよ!!こんなとこでさ!」
知ってる人が通ったらどうしよう
リボーンとかランボとか・・・・山本とか

そんな事を思いながらも、その腕を振りほどけなくて


泣きそうな声で繰り返される
「好きです。十代目。」
キミの、まるでなにかをねだる子供みたいな声





いつもキミはそう
そうやってオレを動けなくさせる

















ややあって











腕をほどくのをあきらめたオレが
あやすように、キミの頭をなでる


「好きです。十代目。」
「うん。知ってる。」
「・・・好きです。十代目。」
「うん。わかってる。」



「オレもだよ」って言いたいのに
そう答えるのがやっと





「俺が、女になれればよかったですか?」
不意に、腕の力が緩められて、正面で見つめられる
その目はちょっと赤くて
「俺なんかが、あなたを好きになってしまってすいません・・・・。」
しぼりだすように、そんなこと言うから


ふっと 顔がほころぶ


そしてぎゅっと 苦しくなる


少しづつ色づいていく 空
少しづつ冷たくなっていく キミの指先



「それで 
もしオレが女の子だったとしても、
女の子のキミを好きになるかもしれないよ?」

頭をめぐる思いの中で 
やっと返せた言葉はそんなで
言ってて自分で気づいた


「関係ないんだね。まわりなんて。『普通』なんて。」


そっと、君の手をはずして ぎゅっと握ると
ほけっとしてる君


きっとピンと来てないな


(うわぁ。オレ・・・。なに言ってるんだろ。)
今度は自分が下を向いてしまって
顔があげられなくなった



君の手を引いて歩き出す
ゆっくりと坂を下っていく二人についてくる長い影



空は蒼くなってく
影は薄くなってく



でも




つないだ手は離さないって決めた
誰に見られても
なにを言われても





キミが好きだから




うまく表現できないけれど オレも同じくらい
切ないはずだよ 好きだよ 君が好きだよ






君の手をひいて、空をあおぐ
この坂から、空を見るのは別に初めてじゃないのに
何故だかいつも以上に綺麗で 儚くて




長い月日を オレが強く生きてゆけたなら
この手を
ずっと離さないでいられるのかなと思って
キミの冷たい指を ちょっと強く 握った



うまく表現できないけれど たとえ大人になっても
変わらないはずだよ 好きだよ 君が



大好きだよ